限界集落といっても、地図の中から、その町や村が突然消えるのではない。家々や社や寺や、それら全て残るのだが、住む人がいなくなるのである。いわば人気のないゴーストタウンのようになるのである。
神社や寺はどうなるのだろうか?人がいなければ、そこに神や仏のような目に見えない存在は、もう目に見えない存在のままになっていくのだろうか。社やお堂は、つたやつるまかれ、雨露によって、自然に朽ち果てていくのだろう。神や仏として人間に認識され、神名と仏名を得た存在は、また大いなる宇宙と同化する。宇宙と同化するのは良いが、それ迄、人間の側から築いてきた信仰の歴史は断絶してしまうのである。この歴史は人間の側の神や仏の交流史である。限界集落によって失うものは、大きい。